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iPS細胞を使った再生医療とは?実用化に向けた動きや課題を調査!

投稿日:2019-12-28 更新日:

「再生医療」は、けがや病気などによって失ってしまった機能を、薬で治療するのではなく、人間の体がもっている「生成する力」を利用してヒトの臓器や組織の再生を目指す医療です。

臓器や組織の再生により失われた機能を取り戻すことができます。

その代表的なものは、様々な細胞になれるES細胞を使った再生医療です。

ES細胞は、人間のあらゆる組織や臓器の細胞を作り出すことができ、多能性幹細胞と呼ばれています。
           
一方、新しい多能性幹細胞の作製方法の研究に取り組んでいた京都大学の中山伸弥教授グループは、2007年に人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)と呼ばれる多能性幹細胞の作製に成功したのです。
  
その名称は、中山教授が英語の頭文字をとって「iPS細胞」と名付けました。

中山教授は、その功績により2012年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。

そこで iPS細胞とは何か?特にES細胞とどう違うのかが気になります。
   
中山伸弥教授にノーベル医学生理学賞が贈られてから7年余りが経過しました。

iPS細胞を始め、再生医療の実用化に向けた動きは今、どこまで進んでいるのか調査しましたので、ご報告します。

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iPS細胞とは?特にES細胞との違いは?

iPS細胞は、血液や皮膚などの細胞に、ES細胞で特に働いている4つの遺伝子を加えて作ります。

更に、一定の条件で培養することで、神経や心臓といった様々な細胞や組織にすることができます。

こうして培養して変化させた細胞を患者に移植し、病気やけがなどで失われた機能の回復を目指すわけです。

一方、ES細胞も代表的な多能性幹細胞の一つで、同様にいろいろな臓器や組織の細胞に分化することが可能です。

大きな違いは、ES細胞はヒトの受精卵を使い、発生初期の胚を破壊して作る点です。

問題は、生命が誕生する可能性のある受精卵を破壊することや患者由来のES細胞をつくることが技術的に難しく、他人のES細胞から作った臓器や組織の細胞を移植した場合、拒絶反応が起こることです。

iPS細胞が画期的なのは、患者自身の皮膚や血液など採取しやすい体細胞を使って作ることができ、ES細胞が持つ2つの問題を回避できるのです。

実用化に向けたいくつかの動き

ヒトiPS細胞は、2007年に山中教授が発表して以来、国内外で研究が進められてきました。

ヒトに初めて移植されたのは、2014年です。

理化学研究所などが、目の難病「加齢黄斑変性」の患者で臨床研究をしました。

この病気は、網膜の組織が傷むことで、視野の一部が欠けたりゆがんで見えたりします。
  
そこで、患者自身の皮膚から作ったiPS細胞を網膜の組織にして目に移植しました。

このようなiPS細胞を使った臨床研究には期待が大きい一方、まだ新しい試みなので体への影響などで未知の部分もあります。

そのため、臨床研究を始めるに当たっては、厚生労働省からの承認を得る必要があります。

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そんな中、2018年の昨年は実用化に向けた動きがいくつかありました。

これまでは加齢黄斑変性だけだったのが、2018年10月、京都大がパーキンソン病患者にiPS細胞から作った神経細胞を移植する治験を行いました。

また、iPS細胞を心臓の筋肉細胞にして重い心不全の患者に移植する大阪大チームと、血を止める働きをする血小板をiPS細胞から作って血液の難病「再生不良性貧血」の患者に輸血で移植する京都大チームの臨床研究計画が、国に認められました。

更に慶応大チームは、脊髄損傷の患者に神経のもとになる細胞を移植して、運動や感覚の機能を取り戻そうとする計画を2018年末に提出しました。

順調に行けば、この3例は今年中に実施されるとみられます。

他にも、理研チームが、NKT細胞という、がんを攻撃する細胞をiPS細胞から作り、頭頸部がんの治療に向けた治験を行うことを目指してします。

実用化に向けた課題

実用化に向けてはコストダウンも必要です。
 
そのため、他人の細胞から作った複数のタイプのiPS細胞をストックしておく事業があります。

また、iPS細胞の弱点として腫瘍化の恐れが指摘されていますが、慶応大チームはあらかじめ特殊な化合物を加えることで腫瘍化のリスクを抑える工夫をしています。
 
大学などの研究機関だけでなく、企業でも再生医療をめぐる動きが活発になっています。

目を引くのは国から承認を受けた再生医療製品の製造販売です。

ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社の「ジェイムズ」は皮膚の再生を目指した製品です。

この製品は、重い熱傷などの患者自身の細胞を採取して培養し、シート状にして移植します。
 
そのほか、ひざの軟骨を再生させる製品や、足の筋肉由来の細胞をシート状にして心不全の患者に移植する製品などもあります。

2018年末には脊髄損傷を対象とした細胞製剤が加わりました。

関係企業でつくる団体「再生医療イノベーションフォーラム」の運営委員長は、「承認を待っている製品も複数ある」とし、再生医療の現状を「夜明けから日が昇っている状況に変化している。これからもどんどん明るくなるだろう」といいます。

一方で再生医療とうたいつつ、有効性がわかりにくいものがあります。

高額な治療費を請求される場合もあるので、注意が必要です。

まとめ

それでは今回のまとめです。

iPS細胞が日常の治療で広く使われるようになるのは、まだまだ時間がかかると思います。

ですが、医師や研究者の中には休日にもシンポジウムで講演したり、患者団体と交流したりしているエネルギッシュな人たちがいます。

その原動力は「早く再生医療を患者さんに届けたい」という熱い思いだそうで、そうした医師や研究者の方々には頭が下がります。

これからも頑張っていただきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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管理人の浅野清美と申します。
長年勤めた役所を退職した元地方公務員。
現在は、現役の時にお世話になった役所の退職者を会員とする一般社団法人の事務局で会員ボランティアとして活動しています。
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