最近、家電量販店のテレビ売り場には「有機EL」の表示が目立って来ています。
液晶に続く次世代ディスプレーとしてだんだん人気が出てきていますが、有機ELとはどのようなものなのでしょうか?
この記事では、次世代ディスプレーとして人気が出てきている有機ELパネルが発光する原理や仕組みについて解説するとともに、今後、どのような分野、用途で使われていくのか報告します。
目次
有機ELパネルが発光する原理・仕組みとは?
有機EL(Organic Electro Luminescence)(オーガニック・エレクトロ・ルミネッセンス)とは、有機化合物に電圧をかけると光を放つ現象のことをいいます。
有機ELに電圧をかけると、2つの電極からそれぞれプラスとマイナスの電荷をもつ「正孔(ホール)」と電子が有機物でできた発光層に注入されます。
因みに正孔(ホール)とは、半導体(絶縁体)で光や熱などによって電子が不足した状態が存在するとき、隣の電子がその不足した場所に向かって次々と移動していく現象が生じます。
その現象を、電子が不足した場所に着目すると、あたかも(相対的に)正の電荷を持ったものが移動しているように見えます。それを正孔(ホール)と呼んでいます。
この正孔(ホール)と電子が有機物でできた発光層で再結合すると、その有機物はいったん「励起状態」と呼ばれる高エネルギー状態に活性化されます。
そしてこれが元の安定状態(基底状態)に戻る際に過剰なエネルギーが光として放出されますが、その際、熱は伴いません。
この光の放出現象が、有機ELと呼ばれるものです。
この現象をテレビやスマートフォンのディスプレーに利用しているのが有機ELパネルです。
液晶との違いは?
有機ELも液晶も、ガラス基板や電極、フィルターなどを重ねたサンドイッチのような構造になっている点は似ています。
大きな違いは、光や色を出す仕組みです。
液晶はそれ自体は光らず、シャッターの役割をします。
電圧がかかると分子の並び方が変わり、背面からの光(バックライト)を通したり遮ったりして明暗を調整します。
この光がカラーフィルターを通って映像を表示するというわけです。
これに対し有機ELは、電圧をかけると有機物そのものが光ります。
バックライトが不要のため構造がシンプルなので、液晶より薄く軽く造ることができます。
パナソニックによると厚さは何と、従来の液晶テレビの10の1程度の薄さにできるそうです。
ノートの下敷きのように曲げられるパネルも開発されています。
また、黒の表現力も大きな特徴です。
液晶では黒の部分は隣の光が漏れてしまいますが、有機ELは消えているところは真っ暗になるので、テレビメーカーは「漆黒」をアピールしています。
更に、画素単位で発光を調節でき、応答も速いので、動きの激しい映像もぶれにくいのです。
有機ELパネルは二つの発光方式がある?
有機ELパネルは、発光させる方式として大きく「RGB」と「白色」の二つの方式があります。
RGBは、一つの画素にR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)が並び、それぞれの色に発光して映像をつくります。
RGBは、主に小型パネル向けでスマホなどに使われています。
一方、テレビなどに使われている大型のパネルは白色が一般的です。
有機ELの層から白色の光を出し、液晶と同じようにカラーフィルターを通すことによって映像を表示します。
そのためRGBの方が色の純度や光の利用効率が高いと言われています。
有機ELは大量生産が難しい?二つの製造方法について
有機ELは安定して大量に生産するのが難しいと言われています。
有機物を真空中で蒸発させ、ガラス基板などに接着させる「蒸着」という方法が主流となってきました。
韓国のメーカーがこの方法による安定した生産に成功し、テレビやスマホに使われるようになりました。
この有機ELによる大型パネルが普及したこともあり、パナゾニックやソニー、東芝などの日本メーカーも相次いで新しい大型テレビを売り出しました。
一方、インクジェットプリンターのように、有機物を基板に塗布する「印刷」という方法もあります。
製造する時に真空環境にする必要がなく、材料を効率よく使えるといったメリットがあります。
「印刷」に適した素材やうまく塗り分ける技術を開発するのが困難とされてきましたが、2017年12月、有機ELパネルメーカーのJOLED・ジェイオーレッド(東京)がRGB印刷方式での製品化に成功しました。
主にこの方法で製造されているのは、21.6型の中型のパネルで医療用やプロ向けのモニターに採用されています。
この方法は、外部のメーカーに技術供与されるので、今後、大型テレビなどにも使われるようになるかも知れません。
RGB印刷方式は、様々な大きさのパネルを高効率で生産できる方法なので、有機ELがもっと普及すると考えられます。
まとめ 有機ELパネルの発光原理や仕組み、液晶との違い、製造方法
それでは今回のまとめです。
有機ELパネルが発光する原理や仕組みについて説明してきましたが、説明が電子や「正孔」といった原子物理学の世界のお話で、分かりにくかったかと思います。
メーカーは、将来はロールカーテンのように巻き取れるタイプや紙のように持ち運びやすいディスプレーとともに照明技術としての実用化を目指しています。
また、軽くて薄いので、ドーム型のスクリーンディスプレーとしてプラネタリウムへの応用も期待されています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。