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行政・公的制度

大阪都構想は大阪市を政令指定都市から特別区に格下げする行政改革

投稿日:2020-10-01 更新日:

大阪都構想の住民投票がまた行われます。

一度否決されたものについて再び賛否を問うとは・・・!?

今回は今まで反対していた公明党を賛成派に寝返らせての挑戦です。
その執念深さに驚きます。

もっとも大阪都構想は、大阪維新の会の結党の精神、党の魂のようなものだから党を存続させるためには、やり続けるしかないのかも知れません。

でも、そもそも大阪都構想って一体どんなものなのでしょうか。

大阪都構想は、ずばり

政令指定都市の大阪市を廃止・解体して4つ(前回は5つ)の特別区に分割し格下げする行政組織の改革」です。

そのため、

①大阪府は大阪都にはならず、

②大阪市は4つの格下の特別区に分割されて消滅する一方で、新たに一部事務組合という特別地方公共団体が設立され、

③広域的な事務及びその権限やそれに必要な税収は大阪府に移譲されてしまいます。

以下それぞれについて主に法律的な観点から詳しく解説していきます。

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大阪市を解体して4つの特別区に分割する都構想とは?

出典:あおむらさきさんのTwitter画像から

大阪都構想とは、政令指定都市の大阪市を廃止・解体して4つの特別区という特別地方公共団体に分割する行政組織の改革です。

以下、各項目に分けて詳しく説明します。

都構想が実現しても大阪府(の名称)は変わりません。

大阪都構想が実現しても大阪府(の名称)は変わらず、そのままでは「大阪都」にはなりません。

ちなみに、今回実施される住民投票の根拠法である「大都市地域における特別区の設置に関する法律」では、その第10条で特別区を包括する道府県は地方自治法などの適用については、基本的に「都」と看做されます。

この第10条の定めは、設置した特別区を包括する道府県が都ではないことを逆に証明しています。

設置した特別区を包括する道府県が都であるなら、こんな看做す規定を敢えて定めることはしません。

この問題は、要するに都道府県の名称(変更)の問題です。

地方自治法第3条第3項には、「都道府県の名称を変更しようとするときは、法律でこれを定める」とあり、大阪府を大阪都にするためには、そのための法律を制定する必要があります。

具体的には、地方自治法第3条第3項の規定を受けて、大阪府の名称を大阪都に変更する法律を制定するとか、又はこの第3条第3項の規定を削除する法律改正をして、更に大阪府が条例を制定して大阪都に名称を変更する方法が考えられます。

いずれにせよ法律の制定や改正が必要なので国会(衆参両議院)の議決がなければ実現しないため、相当ハードルは高くなるっていうか、ほとんど不可能なことだと思います。

4つの特別区に分割される大阪市は消滅する一方で、一部事務組合が設立されます。

都構想が実現すれば政令指定都市である大阪市の区域が4つの特別区に分割され、その結果大阪市は無くなってしまいます。

大阪市の消滅についてはこれ以上説明する必要はないでしょう。

でも大阪市を無くして特別区を設置すればそれで終わりかというとそうではありません。

大阪市が無くなってしまうと情報システムの管理や介護保険事務など今まで大阪市の24区全体を一つにまとめて行っていた共同処理事務は大阪府も特別区も処理できず残ってしまいます。

そのため、これらの共同処理事務を所管する新しい組織として大阪府と特別区の間に一部事務組合を設立する必要があります。

一部事務組合というのは、特別区と同種のれっきとした特別地方公共団体です(地方自治法第1条の3第3項)。

実はこれはあまり知られていませんが、東京23区でも各区に共通した事務を共同処理するために東京都知事の許可を得て一部事務組合を設立しています。(特別区人事・厚生事務組合

ちなみに、政令指定都市同士が一同に会して当面する様々な問題を検討する大都市事務連絡協議会という勉強会のようなものがありますが、法務部門の会議にはこの特別区人事・厚生事務組合もメンバーとして参加していました。

一部事務組合を設立すると今まで大阪府と大阪市の2層構造だったものが、今度は大阪府、一部事務組合、特別区の3層構造になってしまいます。

都構想反対派からは、二重行政の解消を目的とする都構想が三重行政を生み出すのは本末転倒と揶揄されています。

特別区の事務を共同処理するための一部事務組合なので、特別区との間で事務が重複することはありません。

しかし、一部事務組合という新たな公共団体をつくるので、議会や執行機関など公共団体として必要最低限の行政機関は備える必要があり、更にそれらとの連絡調整事務が増えるなど効率が悪くなるのは避けられません。

特別区は政令指定都市の3ランク格下の地方公共団体

出典:とこまじ03「〜自治体の仕事〜権限について」

日本の地方自治制度は、基礎的な地方公共団体として市町村が存在し、市町村を包括する広域の地方公共団体として都道府県が存在するという二層構造になっています(地方自治法第2条第3項、第5項)。

基礎的な地方自治体である市町村は、配分事務やそれに基づく権限、取り扱う税目(徴税権)において各々対等の存在で、市町村の別は人口規模の違いに過ぎません。

しかし、現実には大都市の特例や特別区制によって配分事務やそれに基づく権限、更には取り扱う税目に格差が設けられ、対等であるはずの市町村に上下の格付けがなされているのです。

基礎的な自治体としての市町村は、①政令指定都市、②中核市、③一般の市町村、④特別区という順序で格付けされています。

というわけで政令指定都市から見れば、特別区は3ランクも格下の自治体なんです。

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特別区で縮小する配分事務や権限は大阪府が吸い上げます。

大阪市が政令指定都市として行ってきた広域的な事務、例えば消防事務、水道の施設整備・事業運営、港湾事業などのインフラ整備などは特別区では行えず、大阪府に吸い上げられ大阪府が行います。
 
当然のことながら広域的な事務を行う際に行使する権限も大阪府に移ります。

大阪市を分割してできる特別区が行う事務は、住民に身近な事務、例えば保育所や幼稚園、小中学校の整備、児童相談所の運営、戸籍や住民記録関係の事務に限定されてしまいます。

取り扱う税目も8つから3つに減らされ残り5つは大阪府へ移譲

出典:産経新聞(2020.9.23)【都構想いろはQ&A】

税収の源となる税目(徴税権)も次の表のように減らされてしまいます。

政令指定都市 特別区
①個人市民税 ⑤固定資産税 ①個人市民税
②たばこ税 ⑥特別土地保有税 ②たばこ税
③軽自動車税 ⑦事業所税 ③軽自動車税
④法人市民税 ⑧都市計画税

もっとも、減らされた税目による税収も財政調整財源として約8割は特別区の税収になりますが、それでも差し引き年間2,000億円もの税金が大阪府に流出します(平成28年度の決算ベース)。

この2,000億円の約半分は、国から交付される地方交付税で政令指定都市として受けるはずのものが、特別区では受けることができないために大阪府が受け取っているのです。

特別区は、みすみす大阪府に横取りされるのを指をくわえて見ているだけといった状況なのです。

この流出する大阪府の税金ですが、そのすべてが大阪府民でもある特別区の住民のために使われる保証はありません。

 

なぜなら、税金の使い方は大阪府議会で決める予算によるわけですが、大阪府における特別区の人口比率はわずか3割ほどで予算を決める大阪府議会での発言力もそれが反映されるからです。
 
その点、同じ特別区でも東京23区の人口比率は7割なので東京都議会での発言力は大阪府の場合とは大きく異なります。

大阪都構想の賛否を大阪市民に問う住民投票とは?

結局、大阪市を廃止・分割して特別区にする都構想の住民投票は、全額還元される保証のない2,000億円もの税金を大阪府に奪われ、市町村以下の弱小の自治体にされる損失を被る大阪市民にその賛否を問うものです。

2011年当時の橋下大阪府知事は、「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」とまで発言しています。

このむしり取られた税収2,000億円が特別区の住民に使われる保証がないとすれば、今まで大阪市が行って来た行政サービスはどうなるのでしょうか?

例えば、大阪市が独自に行ってきた次のような行政サービスは、特別区になれば出来なくなる可能性は高いです。

独自サービス サービス内容
敬老パス 70歳以上の方に地下鉄・ニュートラムや市営の路線バスを1乗車50円で乗車
塾代の助成 市内の中学生に月1万円の助成(所得制限あり)
子供医療費助成 18歳(12歳までは所得制限なし)まで1月当たり窓口負担2回まで500円。3回目以降無料
学校給食の無償化 公立小中学校の給食を所得制限なく無償化(政令指定都市で初)

これが分かれば、常識ある大阪市民は誰も賛成しないでしょう!

大阪維新の会がこだわる「大阪都構想」のメリットとは?

これまで述べて来たように大阪市民にとっては不利益でしかない「都構想」を大阪維新の会はなぜ実現しようとするのでしょうか。

大阪維新の会は大阪都構想を実現させるメリットとして二重行政の解消(ムダの削減)や東京都のような繁栄を掲げています。

まず「二重行政」の解消ですが、これについては2010年に当時の橋下大阪府知事が大阪維新の会を立ち上げ、大阪都構想を目指し始めた当初から理由に挙げており、この10年間で二重行政と言われるいろいろな分野や施設でその解消が進められてきました。

それぞれに特色ある府立と市立の大学までもが統合され、公立大学として生まれようとしています。

そのため、今では二重行政というものはほとんど無いのではないかといわれています。

(でもこれって、二重行政が都構想を実現させる理由にならないことを意味してませんか?)

それにもかかわらず、依然としてこれを持ち出すのは、「二重行政」という言葉のマイナスイメージを巧みに利用したプロパガンダではないかと思います。
     
次に特別区を設ければ東京都のように繁栄するというメリットですが、これは全くの勘違いだと思います。

東京都が繁栄しているのは、何も特別区を設けているからではなく、東京が日本の首都であり、だからこそこれまでたくさんの投資が東京に一極集中的になされて来たからにほかなりません。

 

今や大阪維新の会は、大阪を発展させ繁栄させるための手段であるはずの都構想を自己目的化してしまい、都構想ありきの議論に終止してしまっています。

常識では到底理解できないこじつけやレトリカルな議論を展開し、バラ色の未来をイメージさせる美辞麗句をばらまいて都構想を正当化しているとしか思われないのです。

この記事の始めに都構想は、大阪維新の会の結党の精神などと敬意を表して言っていました。

しかし、都構想は、何のことはない選挙で票を集めるための看板政策(広告)のようなものに過ぎず、もっと聞こえの良いものが出てくれば簡単に乗り換えるような代物でしかないのだと思います。

(前回の住民投票で否決されたとき、直ぐに今度は「関西州」(道州制)を目指すだとか何だとか言っていましたよね)。

また、前回反対していた公明党を裏取引で賛成派に寝返らせてまでして都構想を実現しようとしています。

結局、大阪維新の会は、都構想を政争の具に貶め、党利党略に使っているに過ぎないのだと思います。

もう一つの疑問 ー なぜコロナ禍のこの時期に住民投票なのでしょうか?

今まで「大阪都構想」なる改革について、その中身について散々批判してきました。

でも、振り返って見ると、なぜこんな新型コロナウィルスで大変なときに住民投票をするのでしょうか?

大阪市を廃止するかどうかという非常に重大な判断を、今なぜ急いでしなければならないのでしょうか。

その点についても、大阪維新の会からは全く説明がなく、大変違和感を感じます。

・・・・

皆さんは「ショック・ドクトリン」という言葉をご存じでしょうか。

日本語で言えば、「惨事便乗主義」とでもいえばいいのでしょうか。

つまり、民衆の健全で常識的な判断ができなくなるような大惨事(ショックー現状で言えば地球的な規模で猛威を振るう新型コロナウィルスの感染症)につけ込んで過激な改革を実施しようとする考え方です。

通俗的な言葉でいえば、「火事場泥棒」です。

この度の住民投票はこの考え方に近いのではないかと思うのです。

大阪維新の会は、コロナ禍の中で大阪市民は感染症に気を取られているから、形だけ説明会を開いて、ささっと住民投票を実施すれば通るに違いないと考えているのだとしたら、大阪市民を馬鹿にした何とおぞましい考えではないでしょうか。

【追記】(11月3日)

コロナ禍の中、今なぜ急いで住民投票を実施するのかということについて、橋下徹さんが大阪維新の会と公明党の密約が背景にあることを暴露していますので、ご紹介します。

橋下さん曰く、(公明党と)「握ったわけですよ。衆議院選挙の議席を維新は公明党に譲る代わりにの住民投票に賛成してもらったわけだから、衆議院選挙が行われる前に住民投票をやらなきゃいけないわけですよ。衆議院選挙が終わってしまったらもうこの約束はどうなるかわからない。・・・急ぎすぎというけれど、政治的には急ぎ過ぎでも何でもない。・・・」

正に党利党略の極みですね。

政令指定都市・大阪市の廃止かどうかという極めて重大な事柄を大阪市民不在の党利党略で進める維新の会も公明党も最低の政党と言わざるを得ません。

まとめ

それでは今回のまとめです。

大阪都構想について、主に法律的な観点からいろいろな問題点を解説してきました。

最後に、繰り返しになるかも知れませんが、今まで触れてこなかった点を含めて以下のことを指摘して終わりにします。  
      
大阪都構想は不可逆的な構想です。

現行の法制度上、特別区から元の政令指定都市に戻す手続きが存在しません。

一般的には分割された地方自治体を元に戻す方法としては、市町村合併という手法がありますが(地方自治法第7条第1項)、特別区については、この地方自治法第7条の規定は適用を排除されています(同法第281条の3)。

地方自治法を改正して特別区の合併を認める制度を作れば可能でしょうが、杉並区などはこれを使って特別区からの脱出に動き出すので、権限や財源を奪われる東京都は絶対反対します。

②都構想を実現するためには莫大な手間や経費がかかります。

現実に政令指定都市から4つの特別区に移行し、一部事務組合を設立する初期費用がかかり、職員の事務引継などが錯綜して移行が完了するのに莫大な経費と時間がかかります。

この間、住民に対する行政サービスはどうなるのか、当然サービス低下は避けられません。

③特別区への移行が完了したとしても、その後いろいろな行政手続きが「三重化」して複雑になる結果、この面からの行政サービスの低下も避けられません。

毎日新聞は、大阪市を4つの自治体に分割した場合、標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト「基準財政需要額」の合計が現在よりも約218億円増えることが大阪市財政局の試算で明らかになったと報じています。

⇒ 毎日新聞 令和2年10月26日

④都構想が実現すれば大阪の都心のまちづくりが停滞し、大阪全体が「地盤沈下」することは決定的です。

今まで大阪の都心のまちづくりを担ってきた大阪市都市計画局は都構想が実現すると解体され、そこで培われた都心まちづくりのノウハウ(事業関係者との調整や用地買収のための地権者との折衝など)は、どこにも継承されない可能性が高いです。

そのため、大阪のまちづくりや都市計画が停滞し、引いては大阪全体が「地盤沈下」する可能性が高くなります。

⑤「大阪の発展や繁栄」に必要なのは、「改革(かいかく)」ではなく財政的に裏付けされた「企画(きかく)」・インフラ投資です。

具体的にはリニア新幹線や北陸新幹線を1日も速く開通させ、それを関空に繋げ、更に四国にまで延伸させるといった交通インフラ整備と併せてターミナル駅を「うめきた2期」の再開発事業などと関連づけて造って行けば大阪は大きく成長発展します。

こうした交通インフラ整備事業は、大阪都構想とは関係なく実施できるし、整備事業を進めて行く上で、実現に莫大な手間と費用がかかる都構想はむしろ障害になります。
  
⑥東京特別区は、戦時下における戦争追行体制の一環として昭和18年に首都東京を中央集権体制にするため、東京市を廃止し特別区として東京府から名称を変えた東京都に編入したものです。

現在、東京23区は地方分権という大きな流れの中で特別区制からの脱却を模索しており、大阪都構想はこうした時代の流れに逆行するものと言えます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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