東京オリンピック・パラリンピックに備えて、テロ対策が強化されています。
医療の分野でも大けがをした人に対する治療が注目されています。
日本ではテロなどによって発生した負傷者を手当する機会が少なく、医療関係者でも慣れていない人が多いため、訓練する必要があるからです。
大けがをして亡くなってしまう主な原因は、大量出血です。
一般に体内の血液の20%が急速に失われると、出血性ショックという重篤な状態に陥り、30%を失えば命に危険を及ぼすと言われています。
けがで出血量が多いほど、止血の手当を迅速に行う必要があり、早いうちに止血すれば助かる命もあります。
私たちもそうした場合に備えて、119番して救急車が来るまでの応急的な止血法を知って置くことが大切です。
大けがをした人に対する応急的な止血法と合わせて出血性ショックの症状とその応急手当について解説します。
目次
大けがをした人に対する止血法の基本とは?
止血の基本は、出血している部位(傷)を直接圧迫する、直接圧迫止血法です。
その方法は?
(1) 出血部位(傷)を確認する。
(2) きれいなガーゼやハンカチなど傷口よりも大きなものを用意し、傷口の上に直接重ねて当て、その上を手で圧迫します。
ポイントは、大きな血管からの出血の場合で片手で圧迫しても止血しないときは、両手で体重を乗せながら圧迫止血をします。
〈注意点〉
・止血を行うときは、感染防止のため血液に直接触れないように注意し、ゴム手袋やビニールの買い物袋などを手袋代わりに利用します。
・止血するために手や足を細いヒモや針金で縛ることは、神経や筋肉を傷つける恐れがあるので行いません。
・ガーゼやハンカチが出血で濡れてくるのは、出血部位と圧迫部位がずれているか圧迫不足のためです。
・刃物などが深く刺さっている場合は抜かないでください。
・刺さったもので止血されている状態であれば、それ以上傷を悪化させないように周囲を清潔なタオルなどで覆い固定させます。
テロや銃撃事件が多いアメリカでは、傷が深くて血が止まりにくい場合は、傷口からガーゼを詰める方法も行われています。
しかし、けがに対応する経験が浅い日本では一般的ではありません。
四肢(腕や脚)を止血する医療器具「ターニケット」
傷口を押さえても血が止まらない四肢の大けがならば、出血しているところから5〜8センチくらい胴体に近いところを三角巾やネクタイなど帯状の布で締め上げて止血する方法もあります。
また最近は「ターニケット」という専用の止血帯も導入され始めました。
「ターニケット」とは?
輪になったベルトを出血している腕や脚に通して短時間できつく締めて出血を止めるための道具です。
元々は軍隊で使われていた医療器具の一つです。
アメリカでは市民の間にも普及していて、AED(自動対外式除細動器)の設置場所にはターニケットも備えてあるそうです。
アメリカでは多発するテロや銃撃事件のためもあり、社会的に広がったそうです。
最近は日本でも救急車に備えられたり、市民向けの講習で使い方を教えるようになっています。
使用する際の注意点は?
四肢を締める場合は、血が止まったらそれ以上は締めないこと。
四肢を締めると、四肢の抹消側がうっ血状態になり、この状態を長時間続けることは体にはよくありません。
そのため、止血帯をかけた時刻を書いた札を見えるところに付けておき、どのくらい止血帯をかけているのか分かるようにしておきます。
ターニケットには時刻を記入するストラップがついています。
出血性ショックとその応急手当
まず出血性ショックの症状についてお話しします。
ショック症状は顔色と呼吸を見て確認します。
ショック症状の見方
- 目は眠そうにうつろになります。
- 表情はぼんやりしています。
- 唇は白っぽくなるか紫色になります。
- 呼吸は速く浅くなります。
- 冷や汗が出てきます。
- 体は小刻みに震えます。
- 皮膚は青白く冷たくなります。
ショック症状に対する応急手当(ショック体位)
- 傷病者を水平に寝かせます。
- 両足を15〜30cmぐらい高く上げます。
- ネクタイやベルトを緩めます。
- 毛布や衣服をかけて保温します。
- 声をかけて元気づけます。
なお、頭にけがのある場合や、足が骨折していて固定していないときは、ショック体位ではなく、仰向けに寝かせます。
まとめ 大量出血の止血法やターニケットの注意点、出血性ショック時の対応
それでは今回のまとめです。
大けがをして大量出血したときの止血方法について、お話ししてきました。
基本は出血部位(傷)を直接圧迫して止血する方法でした。
腕や脚など四肢から出血している場合は、最近はターニケットという輪になったベルトのような道具を使って止血するケースもあります。
救急車に備え付けられていたり、市民向けの講習会で使い方を教えていることもあるようです。
ですが、ターニケットを正しく使うと負傷者に相当の痛みが生じるため、遠慮して緩く締めると止血しないどころか、かえって出血量が増加する事態にもなりかねません。
そのせいで基本の直接圧迫が疎かになってしまったら、本末転倒です。
ターニケットの講習は、本来の使い方とともに、負傷者の痛みやリスクがあることを伝え、これらを理解して覚悟をもった人でなければ使えないことも教える必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。