日韓関係が悪化の一途をたどっていますが、そもそも、その発端となったのが、元徴用工訴訟に対する韓国大法院(日本でいえば最高裁)の判決とその後の韓国政府の(無)対応。
一方、日本政府は、韓国に対して半導体の核心素材3品目の輸出管理の強化と貿易管理における『ホワイト国』からの除外を行ったわけです。
日本政府は、貿易に関する日韓の信頼関係の毀損を理由にあげていますが、世論は、元徴用工の大法院判決とその後の韓国政府の対応に対する報復措置というふうに見ています。
これに対し韓国政府は、3品目の輸出管理強化により自国の半導体事業が大打撃を受けると主張し、また『ホワイト国』からの除外にも危機感を募らせています。
そして韓国政府は、対抗措置として自国の貿易管理上、日本を『ホワイト国』から除外するとともに、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄するに至りました。
しかし、専門家によると、これらは韓国の大いなる「誤解」によるもので、それほど大騒ぎするようなものではないといいます。
それはどういうことなのか?
この記事は、2019年8月28日の日本テレビ『情報ライブミヤネ屋』で放送された元産業経済省貿易管理部長の細川昌彦氏の解説について報告するものです。
目次
3品目の管理強化で半導体事業に大打撃という誤解(韓国の誤解その1)
最初に7月4日に発表された対韓輸出管理強化の対象となった半導体の核心素材3品目(①フッ化ポリイミド、②レジスト、③フッ化水素)とはどのようなものか説明します。
- ① フッ化ポリイミド
スマホやテレビの画面に使われる材料になります。 - ② レジスト
半導体基板に塗られる感光材として使われます。 - ③ フッ化水素
半導体の洗浄に使用されます。
しかし、これらの素材は軍事転用が可能なんです。
①のフッ化ポリイミドと②のレジストは、レーダーや戦闘機の素材として、また、③のフッ化水素は、VXガスやサリンなどの毒ガスの原料として、それぞれ軍事転用することができます。
ただこれらの物質は、規制の性能値が国際的に決められていて、軍事用途に転用される恐れのある高性能なものだけを規制していて、民生用の半導体に使う量産品とは性能値が違うといいます。
そのため韓国に輸入されているレジスト、ポリイミドの99%は管理強化対象外で、管理強化の対象は1%にも満たない(現実には0.1%程度)といいます。
例えば、管理強化対象となったフッ化ポリイミドは、まだ実用化されていない開発中の、即ち実験段階の『曲がる液晶』の画面用のものであり、それは1%もないのです。
次世代の新しいものを開発する時には使うかもしれませんが、韓国の電気メーカーサムスンなどが輸入しているのは、直近の、例えば来年の開発用に輸入しているもので軍事転用されるようなものではないといいます。
更に、フッ化水素についても、同様に個別許可を受けて輸出している台湾メーカーには影響がでていないので問題はないといいます。
これで「韓国の半導体事業に大打撃」といえるのでしょうか?
細川氏は、半導体の核心素材3品目の輸出管理強化による韓国経済への影響はほとんどないといいます。
『ホワイト国』の除外で1,000品目以上に個別許可が必要になる?という誤解(韓国の誤解その2)
韓国の経済研究院が『ホワイト国』の除外で、韓国に輸出の際に個別許可が必要となる品目は、1,000品目以上に挙がると分析しています。
しかし、韓国を『ホワイト国』から除外したといっても、それは一定の条件付きで特別一般包括許可を認めるBグループにしただけのことなのです。
韓国へ輸出する日本企業が特別一般包括許可(特一包括)を取得すれば、今まで通り輸出が可能なのです。
そして、輸出元の日本企業の現状はといえば、そのほとんどが、この許可を既に取得済みなので、韓国を『ホワイト国』(Aグループ)からBグループに格下げしたとしてもその影響はほとんどないといいます。
『ホワイト国』とは、国に着目して輸出管理をちゃんとしている国だから自由に輸出を認めるという制度です。
それが今度は、輸出企業がちゃんと社内で輸出管理をしていれば、その企業には包括許可を与えるという制度に変わったわけです。
『ホワイト国』のときも日本企業がちゃんと自主管理していなければならないのですが、それをやっていることを前提にしていたら、ずさんな管理をしているところがでてきたのです。
そのため、きっちりと自主管理している企業だけに特典を認めるという制度(グループB)に移行しただけのことなのです。
ずさんな管理をしている企業だけが文句をいっているといいます。
今回の措置は日本と韓国の間の貿易の問題でずさんな管理をしていることに対して行った措置であり、韓国の不正輸出の問題とは関係ないといいます。
言い換えれば韓国の不正輸出を誘発しかねない日韓貿易のずさんな管理を、事前に防止するために行った措置だといいます。
このようなずさんな管理を放置していると日本が国際的に批判を受けるので、ずさん管理の蓋を閉めるというのが今回の措置の目的といいます。
『ホワイト国』除外は安全保障上も信頼できないとする誤解(韓国の誤解その3)
韓国は、日本による『ホワイト国』除外であたかも安全保障上信頼できない国であるかのようなレッテルを貼られたと主張しますが、これも大きな誤解といいます。
インドのように輸出管理では韓国より低いグループCに属しますが、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結している国もあります。
輸出管理上の信頼ランクと安全保障上の信頼の問題とは全く次元を異にする事柄なのです。
韓国はそれを意識的にごちゃ混ぜにして主張しているのです。
まとめ 韓国向け輸出管理強化と韓国の3つの誤解
それでは今回のまとめです。
日本政府が実施した韓国向けの輸出に対する管理強化、そして『ホワイト国』からの除外は、韓国側に予想を超える衝撃と動揺を与えています。
それは、その対抗措置として同様に日本を韓国の『ホワイト国』から除外することや、遂には安全保障上の信頼に基づく軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄にまでに至ったことでも明らかです。
そこで貿易管理の専門家である細川昌彦氏にお話を伺ったわけですが、韓国が騒ぐほどの影響はないということが分ってきました。
むしろ事柄の多面性や多様性(TPO)を認めようとしない韓国政府の小児病的な性格が明らかになってきたのです。
こんな政府のもとで韓国及びその国民の将来はどうなるのでしょうか?
しかし、韓国政府は更に、福島の原発事故を理由に福島産の農産物や水産物の安全性検査の強化を主張しています。
日本としてはまだまだ油断できませんし、日韓関係の問題は簡単に収束しそうもありません。
日韓関係については、これからも注視して行く必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。